自信が持てる息に!気になる“口臭” を徹底ケア

他人と近い距離で話すとき、自分の口のニオイが気になることってありますよね。面と向かって聞けないだけに、ひとり思い悩むことも少なくない「口臭」問題。今回は口臭専門クリニック「TOKYO BREATH CLINIC」の上田恵子先生に、口臭が発生するメカニズムや、正しいケアについてうかがいました!

上田恵子先生
Profile
上田恵子先生

日本口臭学会認定医。2002年に「新浦安デンタルクリニック」を開業、口臭症治療の分野で5年連続全国1位の実績を上げる。2017年にはそれまでの実績を基に、東京・銀座に口臭症専門クリニック「東京ブレスクリニック」を開業。カウンセリングと各種測定機器による医学的な評価を用いた、悩みに寄り添う口臭専門治療を実践している。

CHAPTER 1
歯磨きしてもニオうってホント?

口臭のメカニズム

ある調査によると、「中高年男性よりも若い女性」「1日2回歯磨きする人よりも3回する人」の方が口臭が強い、という驚きの結果が報告されています。自己流のセルフケアを続けるのではなく、正しく口臭のメカニズムを知ることが、予防の第一歩となります。
※『口臭白書 2019』ブレス・ハザードプロジェクト

病気に由来する口臭

口臭の原因は主に2種類あり、そのひとつが病気によるもの。歯科関連であれば歯周病や虫歯、また鼻炎や副鼻腔炎など耳鼻いんとう部の病気、まれに糖尿病などが原因で発生するケースもあります。この場合、口臭は病気の症状として現れているため、治療することで解決できます。

生理的口臭

もうひとつの「生理的口臭」は、すべての健康な人に認められる、一時的な口臭です。口の中の細菌が増え、揮発性硫化物(きはつせいりゅうかぶつ)というガスが大量につくられた結果、臭いが強くなります。ニンニクやアルコール、特殊な薬を服用したときに出る臭いもありますが、口臭のほとんどは、口の中で発生するこのガスによるものと考えられます。

「口臭ガス」とは?

口の中に存在するだ液やはがれ落ちた粘膜、汚れなどのたんぱく質は、細菌によって分解され、最終的に硫黄のような不快な臭いを放つ揮発性硫化物(=口臭ガス)となります。このガスは、主にだ液が蒸発(揮発)したもの。つまり、だ液が汚れると口臭も強くなります。

口臭サインは「サラサラ→ネバネバ」

分泌されたばかりのだ液はサラサラで酸素が豊富に含まれ、循環しながら口の中を中性に保ち、口内常在菌のバランスをとっています。臭いが発生するのは、この循環が止まったとき。だ液の酸素量が減り、臭いを出す嫌気性菌が爆発的に増加します。その結果、だ液は汚れてネバネバに。

口臭が出やすいタイミング

起床時

舌の動きが止まるとだ液の分泌も循環も少なくなり、口の中が乾いて細菌繁殖が加速。そのため起床直後の口の中には、就寝中に増えた大便10g相当の細菌が存在するといわれています。歯磨きは朝食の後ではなく「起きてすぐ」を心がけて。

イライラしているとき

ストレスを感じたり緊張状態にあると、口の乾きを感じませんか?だ液の分泌は自律神経によって調節されており、交感神経が優位になると、だ液の循環が止まりやすくなります。ホルモンの変調やライフイベントによる変化が多い女性は、男性に比べ生涯ストレスが多いとされ、その分口臭も深刻化しやすいと考えられます。

前かがみ姿勢が長時間続いているとき

デスクワークやスマホの操作に集中していると、目線が下に落ち、前かがみの姿勢をとりがち。これは気道を圧迫し、また両奥歯を常に噛みしめる形になるため、舌が動かずだ液の分泌・循環も止まってしまいます。

舌そうじ

口の中が乾くと、舌の表面にある舌乳頭(ザラザラした粘膜の突起)が防御反応で白く伸び上がります。これを汚れだと思ってはがし取ると、さらに乾燥が進んでだ液が濁る原因に。粘膜は非常にデリケートなので、歯ブラシで強くかき出すなんてもってのほか!

CHAPTER 2
あなたは大丈夫?

口臭リスクをチェック

口臭は1日の中でも変化するため、必ずしも強い臭いを放ち続けているとは限りません。ただ、口内環境は生活習慣の影響を受けやすく、低下した状態が続けば臭いも慢性化します。まずは、チェックシートで生活パターンを振り返ってみましょう。

口臭リスク
チェックシート

  • ①半年以上歯科を受診していない
  • ②朝食を摂る習慣がない
  • ③コーヒーや緑茶をよく飲む
  • ④喫煙の習慣がある
  • ⑤あまり水を口にしない
  • ⑥間食の回数が多い
  • ⑦食いしばりグセがある
  • ⑧「食べない」ダイエットをよく行う
  • ⑨口呼吸になりやすい
  • ⑩仕事や家事は誰とも話さず集中して行いがち
◎1つでも当てはまれば、口臭が出やすい状態になっている可能性あり!

いくら丁寧に歯磨きをしていても、長期間歯科検診やクリーニングを受けていない(①)と何かしら病気が隠れていることもあり、口臭リスクは低減しません。必ず定期的な受診を。

食後は口の中が酸性に傾き、だ液のはたらきによって元の中性に戻ります。間食回数が多い(⑥)と酸性状態が長く続くことになり、細菌が増殖して口臭が出やすくなります。

空腹時はだ液の分泌が減少するため口臭リスクが高まります(②⑧)。またカフェインを含むコーヒーや緑茶は体内の水分を奪い、口の中の乾燥も加速します(③)。

CHAPTER 3
そのセルフケア、思い込みかも?

効果的な口臭ケア

口臭対策=歯磨き、と考える人は多いはず。ですが、歯磨きの本来の目的は虫歯や歯周病を防ぐためで、息をきれいにするものではありません。口臭を防ぐには、だ液を循環させ、常に口の中をうるおった状態にしておく必要があります。

朝食を摂る

もっとも細菌発生が少ないタイミングは、舌が活発に動く食事中。サラサラだ液の分泌量も増えます。朝、しっかり噛んで食べることで口の中がうるおい、午前中の空腹時口臭が防げます。パン食よりも和食がおすすめ。

歯磨きは1日2回

丁寧に歯を磨くのは、寝る前と起きてすぐ。食後の過度の歯磨きは、口の中の粘膜を傷つけたり、せっかく出ただ液を洗い流してしまい、かえって口臭を強くするおそれがあります。食後はフロスや歯間ブラシで汚れを取って、簡単な水磨きや、水うがいを。

ガムを口の中に入れておく

だ液の分泌は舌を動かすことで促されますが、集中時などは口の中の機能が停止しがち。ガムを口の中に入れておくと、生理的な反射(異物反射)でだ液が湧いてきます。甘く柔らかいガムではなく、刺激の少ない硬めのものがおすすめです。

こまめに水を飲む

食べもののカスの大半は、歯ではなく舌に付着します。粘膜を傷つけずに舌の汚れを取るにはフワフワと浮き上がらせる作業が必要で、欧米人はそれをガムで行いますが、水を含んで舌を動かすのも効果的です。また、何かを飲み食いした後は水を飲み、口の中を中和することが大切。乾燥予防にもなります。

笑顔で「ららら」

口の中がネバついてきたなと感じたら、笑顔を作って「ら・ら・ら…」と繰り返してみましょう。舌が動き、だ液の分泌が促されます。にっこりほほ笑むことでリラックスでき、交感神経の高まりを和らげる効果も。

口臭専門外来を受診する

だ液の分泌量や緩衝能力(酸性に傾いた口の中を中和する能力)には個人差があるため、悩みが深い場合は口臭専門のクリニックや外来で、検査やカウンセリングを受けてみるとよいでしょう。

上田先生からのメッセージ

上田先生服やコスメなど、目に見えるものに気を使う方はたくさんいます。ですが、どんなに見た目が美しくても、口臭があるとガッカリしますよね。つい後回しにしがちな口臭ケアにも、ぜひ意識を向けていただきたいと思います。また、口臭は目に見えないからこそ悩みも深く、誰にも相談できずに一人で不安を抱えている方は少なくありません。悩みが解消できない場合は、一度専門クリニックに相談してみてくださいね。

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