何気ない会話をしているだけなのに、なぜか「感じがいいな」と思える人っていますよね。心地よいコミュニケーションが取れる大人は素敵に見えるもの。今回は公認心理師の大野萌子さんに、魅力度アップにつながる話し方や、会話下手の克服法についてうかがいました。
- Profile
- 大野萌子さん
- > 一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構
(一社)日本メンタルアップ支援機構代表理事、公認心理師、産業カウンセラー。企業内カウンセラーとしての経験を生かし、官公庁や大手企業でのべ6万人以上にコミュニケーションに関する研修や講演を行う。シリーズ累計50万部突破のベストセラー『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)など著書多数。
「心地いい話し方」の特徴
その人がいるだけで場の空気が和む、楽しい気分になる、そんな人にはコミュニケーションの取り方に特徴があります。周囲の人たちとよりよい人間関係を築くためにも、「心地いい話し方」を心がけてみませんか?
聞き上手
もっとも重要なのは、自分が何を話すかよりも、相手の話を受け止めること。会話はよくキャッチボールに例えられますが、放たれたボール(=言葉)を「そうなんだ」「それからどうしたの」と受け止めの言葉で返すことで相手も安心し、心地よく会話が続けられるように。
表情が豊か
表情をはじめとする視覚的な情報は、その人の印象を大きく左右します。豊かな表情は相手に安心感を与え、こちらの思いも伝わりやすくなります。さらに身振り手振りを加えることで、言葉だけで伝えられない感情までも表現することができます。
相手の言葉を否定しない
たとえ相手の意見が意に沿わないものだとしても、コミュニケーションを図る上で「否定しない」ことはとても重要。受け止める態度を見せることで会話のキャッチボールが成立し、こちらの意見にも耳を傾けてもらいやすくなります。
感謝を素直に伝えられる
小さな頼みごとであっても「ありがとう」と言える人は素敵ですよね。人と人が認め合うコミュニケーションにおいて、「ありがとう」は承認のサインになります。また、人には本質的に「誰かの役に立ちたい」という欲求があり、「あなたのおかげで助かった」という言葉もうれしく響くはず。
「ポジティブワード」を使う
誰かに会ったとき「なんか疲れてる?」と言われるよりも「元気だった?」と声をかけられるほうが気分が明るくなりますよね。ポジティブな表現を心がけることは、心地いいコミュニケーションづくりのコツといえます。
やや低めの声でゆっくり話す
人を心地よくさせ、なおかつ伝わりやすいのは、気持ち低めの声でゆっくり話すこと。話す内容に合わせて抑揚をつける(声の強弱やスピードを変える)のも効果的です。
NGな「話し方のクセ」
話しているとなぜか相手の機嫌が悪くなる、悪気は一切ないのに相手を傷つけてしまった…こんな経験がある人は、もしかすると無意識のうちに身についた話し方のクセで、印象を下げてしまっているのかも。思い当たるものがあれば今すぐ改善しましょう!
会話が「ラリー」になる
相手が発した言葉を受け止めることなく、すぐに意見や質問で打ち返す「ラリー」のような会話は、相手を不快にさせるだけで関係性も深まりません。「キャッチボール」を心がけて。
無表情で話す
自分はそのつもりがなくても「怒っている」と受け取られがちな人は、表情の乏しさが原因かもしれません。表情がないと相手を不安にさせ、伝えたい内容も伝わりづらくなってしまいます。顔の表情がうまく出せない人は、手の動きを多用したり、上半身全体を使ってうなずくなど「体の表情」を意識すると◎。
「でも」「けど」が口ぐせになっている
相手の言ったことに対して返すときに「でも」「けど」といった逆説の接続詞を使うと、相手は自分が否定されたように感じることも。こうした言葉を相づちや口ぐせのように使っている人は、知らずしらずイラッとさせているおそれがあります。
「ブラックワード」を使う
よけいな一言を発したあまり、人間関係にひびが入ることもあります。例えば「言いたくないけど」「あなたのために」は、自己満足や相手への支配につながる言葉と心得て。また「みんなそうだよ」「常識では」「普通は」といった社会通念を持ち出す言い方は、相手に圧を与え、有無を言わせないブラックワードです。
間を空けずに話す
会話中の沈黙に耐えられず「間」を埋めるように、矢継ぎ早に言葉を繰り出す人は少なくありません。しかし、相手に話す隙も考える時間も与えない会話は表面的でしかなく、ただ疲れるだけ。関係性を深めたい相手ほど「間」を恐れずに、考えながら話してみましょう。
相手の目を見つめて話す
よく「相手の目を見て話しなさい」と言われますが、日本人の多くは、近くで見つめられるのが苦手。関係性が浅い相手だと、緊張感が生まれて話しづらくなります。相手の目は時折見る程度でOK。ただキョロキョロしたり、天井に視線を向けるのは、落ち着きのなさや集中していない印象を与えるので控えましょう。
会話下手を克服する方法
家族や昔からの友人だと気がねなく話せるけれど、付き合いの浅い人とは自然に話せない、会話が続かず気まずい思いをする…そんなお悩みを抱える人は少なくないはず。克服のヒントをつかめば、コミュニケーションがもっと楽しくなりますよ。
「よい聞き手」になる
「流ちょうに話せる人=コミュニケーション能力の高い人」ではありません。会話における「聞く:話す」の黄金バランスは「7:3」と言われており、多くを話す必要はありません。まずは「聞く」ことに注力しましょう。とつとつとしか話せなくても、相手の話に耳を傾け受け止めてくれる人は、好印象を持たれます。
質問は「オープンクエスチョン」で
自分が話さなくてもいいように質問ばかりするのは、会話下手さんによく見られるパターン。「はい/いいえ」でしか答えられないクローズドクエスチョン(閉ざされた質問)は相手を問い詰める形になりやすいので、連用は避けましょう。「どんな食べ物が好き?」など、回答の幅が広いオープンクエスチョン(開かれた質問)なら、会話も深まりやすくなります。
「あいまいワード」を使わない
相手に気を使うあまり「どっちでもいいよ」「なんでもいい」「できたらでいいんだけど」といったあいまいな言葉を使っていると、真意が伝わらず行き違いが生じやすくなります。具体的に、率直な思いを表現するように心がけて。
シミュレーションしすぎない
事前に「こういう話をしよう」とシミュレーションしすぎると、想定外の反応が返ってきたときに対応できなくなります。まだ関係が浅い相手だと緊張していろいろと考えがちですが、緊張しているのは相手も同じ。気負いすぎず、肩の力を抜いて接してみましょう。
早く仲良くなろうとしない
人間関係は急激に距離を詰めると破綻しやすく、その場限りで終わってしまうことも。「周りはすぐに仲良くなっているのに、私だけ出遅れてる?」と焦るあまり、相手のテリトリーに踏み込みすぎると拒絶されやすいので注意が必要です。穏やかに長く付き合うために、適度な距離感を保ちましょう。
大野さんからのメッセージ
コミュニケーションの糸口をつかむには「あいさつ」がとても大切。特に苦手意識がある方は、会話よりもまず積極的にあいさつすることをおすすめします。「◯◯さん、おはようございます」と、名前を呼ぶとさらに好印象ですよ。廊下や道ですれ違うとき、目が合ったら思わずそらしてしまう方もいるかと思いますが、会釈してにっこり微笑んでみる。これは相手の気持ちが瞬時にほぐれる非常に有効な方法なので、ぜひ試してみてくださいね。