足の指、ちゃんと使えてる?姿勢も変わる足裏ストレッチ

「足裏」は、意外とケアをおろそかにしがちなパーツのひとつ。ですが、現代病ともいえる体のゆがみや、そこから生じる腰痛などの不調は、足元から生じていることもあるんです。今回は「魔女トレ」の生みの親である舞踊家の西園美彌さんに、足を整え、体も整えるストレッチを教えていただきました!

西園美彌さん
Profile
西園美彌さん

舞踊家。舞台・創作活動のかたわら、クラシックバレエの指導、コンテンポラリーダンスの指導・振付なども行う。2018年の帝京大学水泳部への指導を契機に、アスリートへの姿勢づくり、動作改善指導を本格的に開始。「選手たちを魔法のように変えていく」メソッドは「魔女トレ」として広まり、全国でセミナーを開催している。著書に『魔女トレ 足元にある、動きの「素」』(日貿出版社)。

CHAPTER 1
ちゃんと動かせる? 

足元セルフチェック

現代人の多くは、足裏で地面を押せていない=体の土台が崩れている傾向にあります。しなやかな体幹を育むには、動ける足指と足裏の柔らかさがとても重要。まずは自分の足を観察し、状態をチェックしてみましょう。

床に立ち、足元を見下ろす体勢で
チェックスタート!

①5本の指がまっすぐ伸びているか

親指や小指が内側に曲がっていたり、浮いている指があるのは、足の裏が硬くなって5指が使えていない証拠。指が横向きに倒れる寝指は運動不足が理由であるケースが多く、働く機会を失った指は、本来の機能を発揮できないまま、退化していきます(文字通り「眠った」指に)。

②MP関節が見えているか

MP関節とは指の付け根にある関節のこと(画像)。この関節が機能していないと足裏のアーチが上がらず、足首が固まってしまいます。さらに、足首とつながっている股関節も硬くなって動きが悪くなります。
足で地面をつかもうとしたときに、MP関節が「曲がる」もしくは「浮き出る」人は◎。「MP関節ではなく指の関節が動く」「そもそも目視でMP関節が確認できない」人は、足裏・足首が固まっている可能性大です。

③母指球・小指球・かかとを「点」で感じるか

母指球・小指球・かかと(画像)の接地部を「点」で感じられるなら、足裏のアーチが上がっているということ。とはいえ、元々そうした足を持っている人はごくわずか。「面」でしか感じられない人も、トレーニングを重ねることで感覚は確実に変化していきます。

足指がゆがんでしまう要因は?

足に合わない靴を履いていると、指はバランスを取ろうとして筋肉を収縮させ、縮まります。縮まった状態が続けば指はそれを記憶するので、つま先が狭い靴や、かかとがパカパカする靴はNG。かかとが安定していないと、足指を自由に動かすことはできません。

足指が使えていないとよくないのはなぜ?

足指の1本1本はそれぞれ特定の神経や筋肉とつながっていて、使えていない指があると筋肉の動きに偏りが生じ、血流やリンパなど体内の循環が滞ります。また足首は、足指が機能することによって安定し、足首から股関節へと動きが連鎖して全身運動につながっていきます。そのため、足指の骨の位置を正し「使える足指」にする必要があるのです。

正しい指の位置は?

足の甲にあるスジ(腱)の延長線上にあるのが、正しい位置です。小指が本来の位置とかなり違っている人は多いはず。正しい位置に配列するだけで、体のねじれが解消されます。

CHAPTER 2
姿勢も腰痛も! 

足を整えると
こんないいコト

足は「感覚器」。足裏から情報(感覚)が入ってくると、反射的に関連する筋肉が活動しはじめます。柔らかい足裏に整えることによって、全身の筋肉がバランスよく動き出し、ゆがみからくる不調が改善して、健康を維持することができます。

姿勢がよくなる

土台である足元が安定して骨格が微調整され、重力に負けない、体を引き上げる作用が生まれます。浮き指など指が縮んでいる人は首の後ろ側も縮むため、首が前に出やすくなりますが、指を伸ばすことによって首の後ろも伸び、姿勢が改善します。

腰痛・肩こりの改善

足の指はインナーマッスル(深層筋)と連動しています。足の指が機能するとインナーマッスルが活性化して、過度に緊張していたアウターマッスル(表層筋)が緩み、腰痛や肩こりが改善することがあります。

むくみ・冷えの改善

骨の位置が正しくなると血液・リンパの循環もよくなるため、足のむくみや冷えの改善が期待できます。

お尻が引き上がる

座りっぱなしの生活をしていると、股関節の内旋(骨盤がゆるんだ)状態が長く続き、元に戻りづらくなってお尻がたるんできます。これを改善するカギは足の小指。小指が動くようになれば、つながっている骨盤の後ろ側のインナーマッスルが活性化して、お尻の引き締めも可能に。

呼吸が深まってリラックスできる

足裏のアーチは骨盤帯と横隔膜と連動しています。足の裏が柔らかくなると横隔膜がスムーズに動くようになり、呼吸も深まります。また、精神的なストレスはみぞおちに溜まるため、足の裏が温まってほぐれるとみぞおち(横隔膜)もほぐれ、リラックスできます。

心身が満たされる

インナーマッスルが働いていると、自分の体への感受性が高まり、物事の本質的な部分が体の内部で理解できるようになります。心身が満たされ、深い充実感が得られるように。

CHAPTER 3
3ステップで変わる!

足裏ストレッチ

普段運動する習慣がない人は、自分の体に向かい合う機会がなかなかないもの。その入り口となる3ステップの足裏ストレッチです。2ndステップはかなり痛い!と感じる人も多いでしょうが、体が変わっているのを実感できるはず。その変化していくさまも味わって。
※床でもOKですが、慣れるまでは椅子に座って行うとやりやすいです。

1st step:足首回し

  1. ①右脚を曲げて左脚に乗せ、右足の指の間に左手を差し込みます。指と指の間の水かきに手をぴったりくっつけて、母指球を包み込むように握ります。右手は右ひざに。
  2. ②右足首を10回回します。足首をぐるぐる回すのではなく、左手で母指球をひざの方向に押し込む→力を抜く動作を繰り返して(左手で母指球を押す動作によって足首が自然に回転します)。ゆるんだ足首のネジを締め直すイメージで、しっかり強く押し込みます。
  3. ③左手を1本分小指側にずらして組み直し(小指球を包み込む形になるはず)、②と逆回転で小指球をひざ方向に10回押し込みます。

2nd step:MP関節のストレッチ

  1. ①ひざの中心・足首の中心・中指が一直線上に並ぶようにして、右足のMP関節を床に垂直に押し付けます。この体勢で15秒キープ。かなり痛いけれど頑張りましょう!(床で行う場合、正座の状態から片ひざを立てる)

3rd step:足裏で感覚を味わう

  1. ①右足の土踏まずに左手を当て、足裏で手の温かさを感じます。意識を集中して、体の感覚の変化を観察します。徐々にお腹の奥の方がゆるんで、温かくなってくるのを感じられるかもしれません。
  2. ②手と足が馴染んで境界線を感じなくなるまで行います。

★まず3ステップを片方だけ行い、左右の感覚の違いを確かめてみるとよいでしょう。ストレッチを行った側は、楽に腕が上がったり、重いものを簡単に持ち上げられることに気づくはず。これは体の深部からバランスが整い、緊張していたところはゆるみ、ゆるんでいたところは活性化するといった、体が本来持つ「自己調整」の働きが機能した成果です。

その後、反対側も同様に各ステップを行います。

ワンポイント

  • ・1st、2ndストレッチは「骨の配列を正す」意識で行います。
  • ・必ずこの順番通りに行いましょう。
  • ・ストレッチは朝行うこと。朝に足を整えておくと、終日身体の動きも整います。
  • ・日中、立っているときは足裏の3点(母指球、小指球、かかと、Chapter1の画像参照)を意識する習慣を。3点に均等に乗ると体の偏りが修正されて重心が真ん中にくるようになり、体の機能やバランスも整っていきます。

西園さんからのメッセージ

西園美彌さん足は感覚の入り口であり動きの始まりの場所。いつも縁の下の力持ちとして頑張ってくれているので、そこに光を当ててあげると必ず応えてくれます。足を整えると、その人が本来持っている機能や能力が引き出され、また、自分に対して素直になる、という現象が起こります。最初はよくわからなくても大丈夫。とにかくだまされたと思って一度試してみてください。

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