マスクを外す機会が増えて、顔の大きさが気になり始めた方も多いのでは?それって、食いしばりによるあごのゆがみが関係しているのかも。あごがゆがむと頭痛や肩こりなどにもつながるのだとか。今回は顎関節ストレッチトレーナーの長守雅恵さんに、食いしばりが身体に与える影響や、もたつき顔&不調を改善するストレッチ法をうかがいました!
- Profile
- 長守 雅恵さん
- > トータルエステサロンGrace
歯科衛生士、長守式顎関節ストレッチトレーナー。歯科医院と口腔ケア関連企業での勤務を経て、マニュピレーション(手技を用いた療法)の理論や口腔周囲筋の解剖学に基づく独自の顎関節ストレッチを考案。経営するサロン「Grace」では、歯やあご周りの施術を通して全身の美と健康をサポートしている。著書に『1分神あごストレッチ』(自由国民社)。
食いしばりの要因
「食いしばりなんて無縁」という人も、睡眠時など無意識のうちに起きているために気づいていないだけで、実はほぼ例外なく「食いしばり」経験者なのだそう。生活状況や精神状態と深い関わりがあり、以下のチェックに多く当てはまる人は、日常的なクセになっている可能性も。
してる?してない?
食いしばりセルフチェック
- しっかり寝ているのに疲れが取れない
- 慢性的な肩こりや首の張りがある
- あごを動かしたときにカクカクと関節が鳴る
- エラが張っている
- 舌の側面に歯型がついている
- 頬の内側(口内)に線が入っている
食いしばりを招く要因とは?
ストレス
食いしばりの多くはストレスに起因していて、その代償行為として起こります。受験や仕事、人間関係などで強いストレスやプレッシャーを受けると、無意識に強く歯を噛みしめるクセがつき、10代から慢性化する人も。日本人の真面目な性質も関係していると考えられ、頑張り屋さんほど症状が進みやすい傾向があります。
あごが使えていない
下あごは頭蓋骨の下のそしゃく筋(咬筋や側頭筋)にぶら下がった状態でついており、これら筋肉の働きでさまざまな方向に動かすことができます。ところが、口を大きく開けない、硬い物を食べないといった習慣からあごの筋肉も固くなり、左右の動きが悪くなって、さらに強く食いしばることに。
噛み合わせのゆがみ
いつも噛みやすい側のあごでばかり食べ物を噛んでいると、一方のあごの筋肉だけが緊張し、顔がゆがむ原因になることも。また、噛み合わせは足との関係が深く、立ち方や足の指の使い方が悪いとバランスを取ろうとして噛み合わせがゆがみ、食いしばりに発展することもあります。
集中する時間が長い
食いしばりの多くは睡眠中に起こりますが、日中はパソコン業務や細かいチェックが必要な仕事、スマホの操作など、下を向いて集中している時、無意識に歯を食いしばりがち。長時間にわたる場合は「歯を離す」意識を忘れずに。
体に与える影響
食いしばりが歯やあごに与える負荷は数百キロとも言われており、見た目のみならず、全身への影響は決して小さくありません。原因がわからない不調が続いているなら、一度あごの状態をチェックしてみて。
顔が大きく見える
長年にわたる食いしばりで下あごの骨が変形し、エラが張って悪目立ちすることで顔が大きく見えるように。また噛み合わせのバランスが悪いと一方の筋肉が緊張して、フェースラインが左右非対称になることがあります。
顎関節症
あごの筋肉と関節に大きな負荷をかけ続けることで、あごの位置がずれ、顎関節症を発症しやすくなります。口が開けづらい、痛みが生じるといった症状のほか、さまざまな不調の引き金にも。
首・肩のこり
食いしばりで起こる代表的な症状のひとつ。筋肉の過度な緊張によって首周辺の血流が悪くなり、首から肩にかけて痛みが発生しやすくなります。
めまい・耳鳴り・頭痛
食いしばりや歯ぎしりの刺激でずれたあごの関節が、耳周辺の血管を圧迫して血流が悪くなり、めまいや耳鳴りの要因になることがあります。それに伴い頭痛も起こりやすくなります。
腰痛
頭蓋骨にぶら下がっているあごの位置がずれると、体はズレを修正しようとします。これによって体の重心の位置が変わり、腰に大きな負担がかかって、腰痛を引き起こすことに。またその逆(腰痛が原因であごがずれる)もあります。
骨隆起
長年の食いしばりにより、口腔内の骨が変形することも。歯ぐきの周りや上あごにコブのような硬いふくらみができる「骨隆起」の多くは、睡眠時の食いしばりでかかる数百キロの負荷が原因とみられています。
食いしばり
改善ストレッチ
下あごが左右にうまく動かない、あるいは片方が動かしづらい人は、あごの筋肉がこり固まっている可能性大。筋肉をゆるめることで、食いしばりの軽減や不調の改善が期待できます。また、あごのバランスが整うと頭蓋骨が動き、均整のとれたフェースラインに。毎日のストレッチで「動けるあご」を目指そう!
片側だけで噛む「噛みグセ」の改善に効果的!
“アイーン”ストレッチ
- ①「アイーン」の要領で、下の歯を思いっきり前に突き出します。5秒間キープして元に戻します。
- ②再度下の歯を前に突き出し、その状態のまま左右にゆっくり動かします(5往復)。このとき、首の筋肉も一緒に動いているか確認しましょう。
※左右に動かしづらい人は①を何度か繰り返します。1日3〜5セットを目安に。
食いしばりを招く「低位舌」(舌が下がる)を改善
舌ストレッチ
- ①上を向き、舌を突き出し5秒間キープ。これを5回繰り返します。
- ②上を向いて舌を突き出し、そのままゆっくり大きく回します。左右5回ずつ、舌の根本を突き上げるようなイメージで。
※1日3〜5セットを目安に。
これも試して!
食いしばり改善Tips
舌の位置を意識する
日中は舌の位置を意識して。舌先を上あごの裏につけて一度ふんわりと噛み、上下の歯を1〜2mm離して口を閉じます。この状態が「正しい舌の位置」になります。
ガムを噛む
100%キシリトールガムや硬めのグミを噛むのもおすすめ。疲れない程度に、しっかり強く、あごを回して噛むのがポイントです。
睡眠前はリラックス
睡眠の質を上げることは食いしばり対策としても重要です。アロマを焚く、くつろげる音楽を流すなど、睡眠前はリラックスできる環境を整えて。なかなか眠れないときは深呼吸を。鼻から吸って鼻から吐き出す深い呼吸を繰り返すうちに副交感神経に切り替わり、自然に深い眠りにつけるはず。
長守さんからのメッセージ
食いしばりは「頑張りすぎている人」に多くみられます。今回、ストレッチなどをご紹介しましたが、真面目な方は「◯回やらないといけない」と考えがち。そうすると余計に力が入ってしまうので、あくまで目安として、頑張りすぎないことがとても大切です。
せっかく努力するなら、「ねばならない」を一度手放して、自分を癒やす努力を。どれだけ脱力できるか追求して、自分にご褒美をあげてください。それだけでかなり改善するはずです!