ここ数年のマスク生活の影響で、口呼吸になっていたり、呼吸が浅くなっている人が増えています。呼吸が浅いと体内が酸欠状態になり、さまざまな不調をきたすことも。新年度以降の疲れが出やすい時期だからこそ、呼吸に目を向けてみませんか。今回はZEN呼吸法呼吸アドバイザーの椎名由紀さんに、呼吸の重要性や、腹式呼吸を身につける方法をうかがいました!
- Profile
- 椎名 由紀さん
- > ZEN呼吸法
ZEN呼吸法呼吸アドバイザー、体内対話(株)代表。高校時代より15年間続いた原因不明の心身の不調を江戸中期の禅僧「白隠」の呼吸法で克服。白隠の著書「夜船閑話」と自身の経験から「ZEN呼吸法」としてメソッド化、レッスンや講演などを通じて国内外に発信している。最新著書に『ZEN呼吸〜「健康」は白隠さんから』(春秋社、共著)。
呼吸が浅くなる理由
現代人の不調の多くは、不規則な生活やストレスによる自律神経の乱れが関係しています。自律神経のバランスを調えるには呼吸がとても重要。まずは、不調を招く浅い呼吸の原因から探っていきましょう。
姿勢が悪い
姿勢が悪いと肺が圧迫され、横隔膜など呼吸で使われる筋肉の動きが低下し、体内に十分な酸素を取り込めなくなります。また、猫背を正そうとして胸を張る人が多いですが、これはよい呼吸姿勢とは言えません。上半身に余計な力が加わり、浅い呼吸につながります。
口呼吸になっている
姿勢が崩れ、首や肩に余計な力が入っていると、首周りにある舌骨筋群が緊張して舌の位置が下がり、口が開きやすくなります。そうなると無意識のうちに口呼吸になり、鼻呼吸時と比べて酸素を取り込む量が大幅に減少します。
マスクの常用
マスクを常用していると息苦しさから口呼吸になりやすく、長時間着けていることによって口呼吸が常態化します。必然的に、呼吸も浅くなってしまうことに。
交感神経が過度に働いている
何かに集中しているとき、知らずしらず息を止めていませんか?これは、心身が緊張するとスイッチが入る「交感神経」が極限まで働いている状態。現代人の多くは一日の大半を交感神経が優位な過緊張の状態で過ごすため、呼吸が浅くなりやすいのです。
呼吸法を取り入れる
メリット
人間の体はもともと、健康に生きられるよう緻密につくられています。呼吸法は、自ら手放してしまったすこやかさを取り戻す手段のひとつ。呼吸法には胸式呼吸と腹式呼吸があり、ここでご紹介するのは腹式呼吸。ゆったり深い呼吸で、元気もキレイもかなえましょう。
胸式呼吸と腹式呼吸の違いとは?
胸式呼吸
普段無意識に行っている、胸周辺を使った呼吸。日中の活動や運動時など、身体をアクティブモードにする。浅く速い呼吸で、交感神経が優位に働く。
腹式呼吸
横隔膜を使い、お腹周りを収縮させる呼吸。息を長く吐き出すことで深くゆったりとした呼吸となり、リラックスモードに導く。副交感神経が優位になる。
心身が調う!腹式呼吸のメリット
リラックスできる
副交感神経が優位になり、心身の緊張が解けて気持ちが安定します。自律神経のバランスが調い、ストレスや不安に振り回されない、ポジティブな精神状態をキープしやすくなります。
便秘の解消
実は、腹式呼吸の効果をもっとも早く実感できるのがお通じ!お腹周りを動かすことで大腸が刺激され、便通改善が見込めます。続けることで、力まずスルっと便が排出しやすい体に!
冷え性の改善
十分に酸素を取り込むことで、手足の毛細血管など末端まで血液が巡るようになり、体温が上がって冷え性の改善が期待できます。
代謝アップでやせやすく
体内に取り込む酸素量が増えることは、いわばエネルギーをつくり出すための薪(まき)がどんどんくべられている状態。基礎代謝が上がり、やせやすい体になります。
肌ツヤがよくなる
血の巡りがよくなり、滞っていた老廃物や水分がスムーズに排出されるようになることで、肌のターンオーバーが調い、健康的なツヤ肌に近づきます。
正しい姿勢と
呼吸法
腹式呼吸は本来、意識しなくても自然に行っているもの。しかし現代人の多くは、呼吸に必要な姿勢や体の使い方がわからなくなっているのが実情です。体が本来の呼吸を思い出すよう、正しい姿勢と呼吸法を続けてみましょう。
正しい姿勢
骨盤の中央にある仙骨(お尻の割れ目のすぐ上にある骨)が垂直に立っている状態です。骨盤が前傾(反り腰)していたり、後傾(猫背)しているとよい姿勢にはなりません。上半身は脱力し、下腹部のみに力が入っている感覚があればOK。
腹式呼吸をマスターしよう
まずは今の呼吸をチェック!
胸とお腹に手を当て、鼻から息を吸って鼻から吐きます。このとき、胸とお腹のどちらが大きく動いているかをチェック。胸なら胸式呼吸、お腹なら腹式呼吸です。
呼吸を始める前に
呼吸に頑張りは禁物!まず、息を「吸う」意識を手放しましょう。吐く息に集中して、鼻から細く長く息を吐いたら、静かに体内に満ちてくる空気を「受け取る」イメージで。
❶座った状態でできる呼吸法
- ①背中をまっすぐ立て、上体を30度ほど前に倒します(イラスト参照)。前傾することで横隔膜の動きがよくなり、腹式呼吸を行いやすくなります。
- ②前傾姿勢のまま、鼻からゆっくりと息を吐きます。
- ③鼻から息を吸い、お腹がふくらむのを感じながら、しばらく鼻呼吸を続けます。
ポイント
- ・5〜10分を目安に行います。
- ・慣れてきたら、手の位置を背中の肋骨と骨盤の間(骨がない場所)に変え、吸う息でそこがふくらむのを確認します。お腹がボール状にふくらんでいくイメージで行うとよいでしょう。
- ・立った状態で行ってもOK。
❷しゃがむだけ!
朝スッキリの呼吸法
- ①和式トイレをまたぐように、両足を開いてしゃがみます(イラスト参照)。
- ②背中をまっすぐにして、鼻からゆっくり息を吐きます。息は吐ききらなくてもOK。
- ③鼻から息を吸います。吸う息でお腹が太ももに当たるのを感じながら、呼吸を繰り返します。手を背中に当てて、ふくらむ感覚も確かめて。大腸が動き出し、お通じの効果も期待できます。
ポイント
- ・体に腹式呼吸のスイッチを入れるため、朝、食事前に行います。
- ・効果を早く得るには10分を目安に。しゃがむのに慣れていなければ、3分から始めてもOKです。
椎名さんからのメッセージ
私自身、かつては「不調の百貨店」と言えるほどあらゆる症状に悩まされてきましたが、本来の呼吸を取り戻すことで、すべて解消しました。不調は自分の体をきちんと使えていないサインと言えます。いまの在り方を見つめ直し、呼吸を通して、どこまでもよくなっていく自分の体に出会ってください。健康であれば、エイジングだって楽しくなりますよ!