正しい耳そうじ方法も伝授!いま知りたい本当の「耳ケア」

耳そうじしているのに耳の中がかゆい!という経験、ありませんか?自己流のケアを続けていると、思わぬトラブルを招いてしまうかもしれません。リモートワークで自宅でもイヤホンを使う機会が増えたここ数年は、トラブルも増加しているのだそう。今回は耳鼻咽喉科医の岩崎先生に、耳トラブルの理由や、正しい耳そうじ方法についてうかがいました!

耳鼻咽喉科専門医、めまい相談医。東京医科歯科大学を卒業後、東京医科歯科大学での勤務等、複数病院の医長などを経て2017年同クリニックを開院。耳・鼻・のどの不調やめまいに悩む患者の悩みに寄り添い「わかりやすく、詳しく伝える」診療を心がける。

CHAPTER 1
やっちゃってるかも!

耳トラブルの
意外な理由

耳には外耳、中耳、内耳の3つの部分があり、トラブルを起こす理由はそれぞれ異なります。ついやりがちないつもの習慣が耳トラブルに関係していないか、部分別に見ていきましょう。

外耳

耳そうじのやりすぎ

耳あかは、耳の穴から1cm程度の範囲(軟部外耳道)にしかできません。それより先に綿棒などを差し込むと、耳あかを奥に押し込むことになり逆効果。また、外から見えない部分(骨部外耳道)の皮膚の厚さは0.2mmほどしかなく、強くこすりすぎると傷つき、バイ菌に感染したり耳だれが出る外耳炎を起こすことも。

耳が湿っている状態でイヤホンをつける

風呂上がりなど、湿った耳の中を十分乾かさないうちにイヤホンを装着すると、イヤホンで密閉された内部が蒸れてカビが生えることがあります。特に最近のイヤホンは密閉性の高いものが多いため、水分をタオルでしっかり拭き取ってからつけるようにしましょう。

中耳・内耳

大音量で音楽を聴く

雑音がある環境で音楽を聴く時は音量を上げがちですが、耳が音の大きさに慣れ、知らずしらず大音量になっていることも。音を信号に変える内耳の蝸牛(かぎゅう)が疲労し、騒音性難聴になるおそれがあります。長時間のイヤホン使用は避け、時々外して耳を休ませて。騒音性難聴は瞬間的な音であっても発症することがあるため、ライブ会場やカラオケ店、花火会場などでは注意が必要です。

鼻をすする・強くかむ

鼻の奥とつながっている耳管は、ものを飲み込む時などに開いて鼓膜内外の気圧を調節しています(いわゆる「耳抜き」)。しかし、ひんぱんに鼻をすすっているとこの働きが機能せず、中耳の圧が下がって中耳炎を起こしやすくなります。また、強く鼻をかむと耳管から大きな圧がかかり、内耳を傷つけてしまうことがあります。

歯をくいしばる

歯をくいしばるクセがあると耳管周辺の筋肉がこって血流が悪くなり、耳管が常に開いた状態になる「耳管開放症」を引き起こす可能性が。発した声がずっと響いている、耳がふさがっているような感覚があれば要注意。くいしばりはストレスが原因であるケースも多いので、リラックスできる環境を整えるのも大切です。

CHAPTER 2
負担をかけずにケア

正しい
耳そうじ方法

耳あかは、そしゃく(あごの関節を動かす)や皮膚のターンオーバーで自然に排せつされるため、本来耳そうじをする必要はありません。とはいえ「やらないと気持ち悪い!」という人も多いはず。この機会に負担をかけない正しい方法を身につけて。

どこまでやっていい?

耳の上を引っ張って、外から見える範囲(耳のふちや軟骨部分と、耳の穴から1cm)にとどめます。それ以上奥は皮膚が薄く、耳あかも存在しないので触らないこと。

綿棒は回さず、外にかき出すように

綿棒を耳の穴にまっすぐ差し込み、力を抜いて耳あかをかき出すように動かします。ポイントは綿棒を回さないこと。グリグリと回すと皮膚に圧がかかり、傷めてしまうのでNG。耳のふち部分はやさしく拭って。

竹製の耳かきは、
力を入れずにやさしく

一般的な耳かきは、綿棒よりは耳あかを押し込むリスクは減少します。しかし、力を入れてガリガリと皮膚をこするのは避けて、こちらも耳あかをかき出すようにしましょう。

毎日は×。基本は極力「触らない」

耳のトラブルの大半は耳そうじのやりすぎ、触りすぎによるもの。なので、できるだけ触らないこと。毎日の耳そうじはおすすめしません。お風呂上がりにタオルでやさしく拭う程度ならOKです。

耳そうじQ&A

Q
耳の中がかゆい!
それでも耳そうじしちゃダメ?
A
耳の中がかゆいのは、湿疹ができている可能性もありますが、耳そうじのやりすぎで皮膚がダメージを受けていることがほとんど。傷ついた皮膚を触れば、さらにかゆみが増す悪循環に。かゆみが強い場合は、病院でかゆみ止め軟膏を処方してもらうとよいでしょう。
Q
耳だれが出る、カサカサしたものがある…綿棒で取っていい?
A
耳だれの多くは、耳そうじのやりすぎで傷ついた外耳道に湿疹ができたり、炎症を起こしたりすることが原因です。また、ひんぱんに皮膚をこすると乾燥してカサカサした状態になります。いずれも汚れではなく、こすり取ればさらに悪化します。耳だれが出る場合は受診を。
Q
他に注意すべきことは?
A
指でやらないこと。爪先で皮膚を傷つけ、炎症を起こしてしまう可能性があります。また、耳そうじをする時は小さな子どもを近づけないようにしましょう。子どもがじゃれたすきに耳の奥まで綿棒が入り、鼓膜を損傷するおそれがあります。
CHAPTER 3
今日から習慣に!

耳をほぐすメリット

耳は自律神経と深い関係にあり、多くのツボも存在する場所。耳そうじのやりすぎはよくないけれど、適度な刺激&温めは耳が喜ぶさまざまなメリットが!冷えて固くなった耳周りが、じんわりほぐれていく心地よさを味わって。

つまんで「ほぐす」

耳は美や健康に関わるツボの宝庫。人差し指と親指ではさんで耳全体をマッサージしたり、耳の上・横・耳たぶをつまんで軽くひっぱったりしながらほぐしていきます。心地よいと感じる程度の強さで。マスク着用でこりやすくなっている耳の裏側も忘れずに。

温めて「ほぐす」

耳周辺はそもそも血管が細く、そこに、姿勢の悪さからくる筋肉の緊張やくいしばりが加わると、血流が悪くなって自律神経の乱れやめまいにつながることも。血流を改善するには、耳周りや首すじを蒸しタオルでじんわり温めてあげると効果的です。就寝前のリラックスタイムの習慣にしても◎。

「ほぐす」ことで
こんなメリットが

快眠

副交感神経が優位になって睡眠の質が上がり、翌朝、気持ちよく目覚められます。寝つきの悪さも改善されます。

ストレスが軽減されリラックスできる

ホルモンバランスが整うことで心身のストレスが和らぎ、リラックスしやすい状態になります。

めまいなど不調の改善

自律神経の乱れで起こるめまいや頭痛、肩こりなどの不快な症状が改善されます。

岩崎先生からのメッセージ

岩崎 朱見先生耳そうじはハマりやすく、ついやりすぎてしまう方も多いですが、触らないことが一番。またリモートワークが増えた今は、十分な「耳の換気」も重要です。耳は自律神経のセンサーでもあるので、十分な睡眠や、きちんと朝の光を浴びる規則正しい生活、適度な運動が、結果的に耳や体の健康につながります。意識してあげてくださいね。

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