抜けない疲れやだるさなどの慢性的な不調は、忙しさや年齢のせいにして放置しがち。でもその原因は「隠れ貧血」かもしれません。つらい症状が進んでしまう前に、体からのサインを受け止めて!今回は血液内科の専門医である濱木珠恵先生に、隠れ貧血の症状や解消方法についてうかがいました。
- Profile
- 濱木 珠恵先生
- > ナビタスクリニック新宿
ナビタスクリニック新宿院長。専門は内科、血液内科。虎の門病院や都立病院などの血液内科勤務を経て現職。クリニックでは貧血で苦しんだ自身の経験を生かし、女性内科・貧血外来で女性の健康をサポートしている。
隠れ貧血チェックシート
「隠れ貧血」とは、鉄分不足による貧血予備軍のこと。厚生労働省の調査によると、20~40代の女性の約6割が貧血、もしくは隠れ貧血とされています。通常の健康診断では鉄分の状態をみる項目が省かれていることもあるため、まずはセルフチェックで確認してみましょう。
隠れ貧血チェックシート
- 疲れやすくいつも体がだるい
- 顔色が悪いといわれる
- 階段を登るとすぐに息切れする
- 肌荒れする。
- 爪がもろくなり割れやすくなった
- むくみやすい
- やる気が起きない
- 髪の毛がよく抜ける
- 飲み物に入っている氷をガリガリ食べる
- 生理が重い、出血量が多い(※)
◎0~1個:心配なし
いまのところ貧血の可能性はなさそうですが、鉄分を多く含む食材を選ぶなど、継続的な鉄分補給を忘れないで!
◎2~5個:隠れ貧血かも!
隠れ貧血の可能性があります。生活や食事内容を見直す必要アリ。
◎6~10個:貧血が進んでいる可能性大。一度受診を
体内の鉄不足による貧血が進んでいる可能性があります。食事の改善だけでなく、一度病院を受診してみましょう。
※「生理が重い、出血量が多い」に該当する人は、貧血になりやすく、また貧血に伴う重い症状を引き起こしやすいため注意が必要です。
隠れ貧血が起こす
トラブル
鉄分は、体中の細胞に酸素を運ぶ赤血球をつくる上で欠かせない成分。つまり鉄分が不足すると、細胞が酸欠状態になって代謝が低下し、疲れやだるさをはじめ全身の不調を引き寄せてしまいます。あなたは心当たりありませんか?
肌が荒れる
かゆみやブツブツが出る、乾燥してカサカサする…こんな症状は、隠れ貧血のサインかも。肌細胞のターンオーバーが乱れ、バリア機能が低下することによって肌のコンディションも悪化します。
口内炎や口角炎ができやすい
鉄分は粘膜の代謝にも関わっているため、不足すると口内炎や口角炎ができやすくなります。ものを飲み込みづらくなる症状が出ることも。
爪が割れる
爪がすぐに割れる、二枚爪になるなど、爪が薄く、弱くなるのも貧血特有の症状。鉄分のほか、亜鉛が不足している可能性もあります。
集中できない、イライラする
鉄分不足で脳に十分な酸素が運ばれないと集中力が低下します。また、心を安定させるホルモン「セロトニン」は鉄分の力を借りて合成されるため、不足すると不安感が増したり、イライラしやすくなります。
すぐ息切れする
鉄分不足の体は、酸素を全身にめぐらせるために脈拍を早め、呼吸回数を増やして足りない酸素を補おうとします。息切れしやすくなるのはそのせい。軽い運動で息が上がると「トシだから…」と思いがちですが、貧血が原因であることも多いのです。
むくみやすい
貧血で血液が薄くなると血管内の浸透圧が下がり、血液中の水分が血管の外に漏れ出してむくみが生じます。また、酸素が足りず脈拍が早まることで心臓に負担をかけ、血液がうまく循環されずむくみにつながることも。
鉄分不足を解消する
生活習慣
女性が1日に摂取したい鉄分の推奨量は10.5mg。しかし、実際の摂取量はその6割程度と、圧倒的に不足しています。生理で毎月鉄分を失う女性にとって、継続的な摂取は必須!毎日コツコツ「鉄分貯金」を増やしていくことが大切です。
ヘム鉄・非ヘム鉄を含む食材を摂る
鉄分には、動物性の食材に多く含まれる「ヘム鉄」と、植物性の食材に含まれる「非ヘム鉄」があります。優先的に摂るなら、吸収率の高いヘム鉄を。非ヘム鉄は肉類などのヘム鉄やビタミンCを含む野菜と一緒に摂ると吸収率が上がります。どちらも上手に取り入れて。
◎ヘム鉄を含む食材
赤身肉(豚・牛)、赤身の魚(カツオなど)、アサリ水煮缶、サバ缶
◎非ヘム鉄を含む食材
乾燥ひじき、小松菜、水菜、豆乳、豆腐
また、偏った食生活によるビタミンB12、葉酸、亜鉛不足も貧血の原因になります。これらは特に妊娠中に必要とする栄養素でもあるので、プレママさんは意識的な摂取を。
◎鉄分+不足栄養素(ビタミンB12、葉酸、亜鉛)が摂れる食材
レバー(牛・豚・鶏)、二枚貝(かき・しじみ・あさり)、納豆
補助食品やサプリを利用する
バランスのよい食事で摂取するのがベストですが、忙しくて外食や出来合いのお弁当に頼らざるを得ない場面も多いはず。そんなときは鉄分入りのヨーグルトをプラスしたり、鉄分入りのウエハースをおやつにしたりと、補助的な食品やサプリを上手に取り入れて。
サプリは規定量を守っていればOK。女性の多くは体外に排出される鉄分量が摂取量を上回るため、摂りすぎを心配をする必要はまずありません。
鉄素材の調理器具を活用する
細胞に酸素を運ぶ赤血球は毎日つくられているので、生理時だけでなく継続的に鉄を摂取することが大切。鉄瓶や鉄玉子を使ってお湯を沸かす、鉄のフライパンで調理するなど、鉄素材の調理器具を活用することも、毎日の鉄分摂取量を増やすコツです。
過度なダイエットはしない
食事量を控えるダイエットは、摂取できる栄養量そのものが減ってしまうため、過度な食事制限はNG。「食べない」のではなく、必要な栄養素を摂った上でカロリーを抑えるよう心がけて。
濱木先生からのメッセージ
「貧血くらい大したことない」と不調に目をつぶり、頑張りすぎてしまう女性は少なくありませんが、貧血は立派な病気です。反面、確実に治療できるものでもあるので、体がSOSを発していたら、きちんと受け止めて医師に相談してみてください。 「これって貧血かも?」が空振りであってもいいんです。まず今の不調と向き合うこと。それが、自分の体の状態を見つめ直すきっかけになるはずです。